超合体怪獣、堂々の再登場‼

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筆者:秋廣泰生
ライター/映像演出家。元・円谷プロ製作部所属。1980年代後半より、ウルトラマンシリーズをはじめ、円谷プロ作品の映像商品の制作や、出版物、CDの構成執筆を手掛ける。VHS時代の再編集ビデオの殆どで編集・演出を担当。テレビ番組演出は『ウルトラマンボーイのウルころ』『ウルトラマン列伝』など。

惑星フェラントでの激闘をイメージしたカラーリングで、グランドキングが再登場!

 今回はなんと!2023年12月26日に出版された「エクスプラス 大怪獣シリーズ オールカラー図鑑 円谷プロ編」(ワールド・フォト・プレス刊 ) の発売記念として行われた〈大怪獣シリーズ〉の再販希望アンケートで、堂々第2位の得票数を集めた怪獣の紹介です。

 その名は超合体怪獣グランドキング‼

 1984年 (昭和59年) 7月14日封切りの劇場用作品『ウルトラマン物語 (ストーリー) 』でデビューした、その巨体で進撃し、ウルトラ兄弟も余裕で蹴散らすパワフルな実力派怪獣です!

 『ウルトラマン物語 (ストーリー) 』は、同年春に封切られた劇場用作品『ウルトラマンZOFFY ウルトラの戦士V.S大怪獣軍団』の舞台挨拶時に、登壇した当時の円谷皐社長が、ウルトラマンタロウを主役とする次回作の構想を披露したことが始まりと言われ、更に大杉久美子さんを迎えた同時上映作品 ( 後に『アニメちゃん』として結実 ) についても披露されたそうです。

 グランドキングのデザインを手掛けたのは『ウルトラセブン』の特撮班美術助手として円谷特撮のキャリアをスタートさせた山口修さんですが、これまでウルトラ兄弟に倒され、宇宙に漂う悪霊となった怪獣が結集したという設定から、コンセプトワークの段階では、例えるなら暴君怪獣タイラントに近い、様々な怪獣や宇宙人たちの各部位が組み合わされた姿であった様です。

 主役であるウルトラマンタロウを中心に据えた『ウルトラマン物語 (ストーリー) 』最初期の青い色調のポスターには、本編中に登場しなかった宇宙忍者バルタン星人(二代目)や、古代怪獣ゴモラなどの姿があるのに気付かれた方もいらっしゃると思いますが、そうした経緯から、実は彼らは企画段階で何らかの構想がなされていた怪獣たちだったのです。

 最終的なグランドキングの姿は、どこかしらにそれらのエッセンスを感じさせるものとなり、結果、このポスターは企画時の動向をうかがい知ることが出来るという、期せずして歴史の証言者となりました。

 〈大怪獣シリーズ〉としてのグランドキングは、これまで2回リリースされてきました。
 初版はグランドキングの主戦場となった「惑星フェラント」の赤い発光に照らし出されたイメージでの塗装を全身にまとっていました。

 再販時は “シルバーバージョン” と銘打ち、撮影時のスーツの実際のカラーリングに近いであろうという探究考察から、随所にシルバーを配色した姿となりました。

 そして今回は、再び惑星フェラント戦での姿に着目。ウルトラ兄弟たちの光線一斉発射を浴びてもなお!怯むことなく襲い掛かってくるシーンをイメージし、初版時のカラーリングから更に赤味、茶色味を強めた、メタリック感のある塗装仕上げとなっています。

 まさしく “激闘カラーバージョン” と言うべき姿でのカムバックです!

 ウルトラマンシリーズでは時折、実際のスーツの彩色と、特撮ステージでの照明効果や異空間の合成処理などで、全く色合いが違って見える怪獣が出現しますが、グランドキングは、その好例と言えます。

 グランドキングのスチールは大別して、スーツの納品直後、撮影所である東宝ビルトの屋外にて快晴の空のもと撮影された、前述の “シルバーバージョン” のイメージ原石として参考にされた姿のもの。そして塗装や造形などが再検討された後、特撮ステージで種々の照明下で撮影された、初版の彩色ベースとなったものがアーカイブされており、こうした視覚的な違いも総合的に解析しながら〈大怪獣シリーズ〉のグランドキングはリリースされてきました。

 今回の再販にも、そんな2つの姿を礎にしたカラーリングによる探究心が息づいており、改めてグランドキングの持つ歴史の奥深さを感じずにはいられません。

 グランドキングが第2位の得票数を獲得したその背景には〈大怪獣シリーズ〉としての完成度の高さに加え、なんと言っても封切りの頃に幼少期が重なった方々の 熱き “グランドキング愛” が令和の世に至るまで、大きく影響していた模様です。

 また現在『ウルトラマン物語 ( ストーリー ) 』のデジタルリマスター版DVDが発売されてから20年超という辺りも、“グランドキング愛” 第2世代の新たな熱意が醸成されていく時間となっていったのではないかと、思わずにはいられません。

 筆者にとってもグランドキングは実に大きな存在です。
 新怪獣が毎週続々と登場して心躍らせてくれた『ウルトラマン80』の1981年3月25日放送終了という形で、新怪獣登場の流れがカットアウトされることになってしまいますが…最終回で冷凍怪獣マーゴドンがジャイアントボール作戦で粉砕されてから実に3年超、映画館で最新のウルトラ怪獣が猛威を振るう!という、怪獣喪失感から一気呵成の駆け上がり感は、リアルタイム世代だけの特別な高揚体験ではなかったかと思います。

 また、撮影終了後のグランドキングは、各地の展示イベントでも威容を誇っていましたから、´90年代前半辺り位まで、実際のグランドキングの立ち姿を目にした方々もいらっしゃるのではないでしょうか。

 グランドキングはウルトラ兄弟よりも頭ひとつデカいボリュームある巨体ですから (流石は劇場版ウルトラマンシリーズ初の完全主演怪獣!) 、個人的な記憶を辿ると、普段の管理はもとより、展示設営も簡単では無かったことが思い出されます。

 劇中でのグランドキングには、事実上のラスボス怪獣としての役割があり、その圧倒的存在感や、頑強な表皮外装の質感を創出するために…当時の造形材料も影響したかとは思うのですが、グランドキングは、とにかく重い!そして硬い!

 グランドキングは、その当時でウルトラ怪獣No.1と断言しても良いのではと思えるボリューム感でしたから、頭部を含む全身もそうですが、尻尾も両腕も!まさに規格外のヘビー級でした。
 そして〈大怪獣シリーズ〉のグランドキングは、そうした感覚を迫真の存在感を込めた造形力で疑似体験させてくれていたことは、もはや言うまでも無いでしょう。

 そんなグランドキングに真っ向から取り組み、両腕を上げ体を震わせて威嚇し、一気に飛び掛かるウルトラ兄弟も見る間に凪ぎ払う、生命力みなぎる獰猛さで演じきったのが、スーツアクターを務めた宮本知彰さんでした。
 宮本さんは´80年代半ば、円谷プロで初めて結成された『悠翔アクションチーム』( 読み方は「ゆうひ」/命名は実相寺昭雄監督 ) の中心を担っていました。『仮面ライダー』(1979-80) にも友彰、知彰、知章などの名義で出演し、竹蔵名義で劇場用作品『仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王』の銀河王を演じています。
(なお宮本さんは『ウルトラマン物語 ( ストーリー ) ではノンクレジットながら、ジュダも演じていました。)

 宮本さんは小柄な印象の方だったのですが、この体のどこからグランドキングを演じるパワーが!?と、驚かされた記憶があります。
 特撮監督を務めた高野宏一さんは、思い描いた演出イメージの追究には非常に厳しい方でしたから、あの力強いグランドキングは、まさしく宮本さんの努力や精神力の結晶なのだと感じています。

 一方、マーゴドンからグランドキングまでの間が完全に怪獣空白だったわけではありません。
 当時の感覚で言えば、ウルトラマンシリーズの外伝的新ヒーローとして〈アンドロメロス〉がデビューし、小学館の『てれびくん』誌上をはじめとしてカラーグラビア掲載がスタート。
 やがて『アンドロ超戦士』として物語性や世界観がスケールアップし、関東地区のみとは言え『アンドロメロス』はテレビ化も果たしていました。

 『ウルトラマン物語 ( ストーリー ) 』での黒幕として、数々の悪事をはたらき、グランドキングの誕生を画策した宇宙の帝王ジュダは、アンドロ超戦士シリーズからのスピンオフと言えるでしょう。

 実はグランドキングの咆哮音は、ベムズン、ギエロニア、キングジョーグら怪獣戦艦のテレビ登場時に製作された、種々の咆哮音をベースに作られたものでした。
 『アンドロメロス』と『ウルトラマン物語 ( ストーリー ) 』の両作で効果音を担当した須藤輝義さんの仕事場で、怪獣戦艦の効果音を聞かせていただいた、その時の感動的思い出は、今も鮮明です。

 なお、その出で立ちから、グランドキングはロボット怪獣の一種だと受け止められることが当時から度々でしたが、その原因というか、ロボット怪獣の如くに印象付いていった理由のひとつには、かの咆哮音が非常にマッチしたこともあったのかもしれないと思う、今日この頃です。
(個人的にグランドキングは、アンドロ超戦士やジュダの特徴であるボディアーマーの流れを汲んだ、“強固な装甲怪獣” といったイメージを抱いています。)

 こうしてみるとグランドキングには、ウルトラ怪獣としての様々な歴史があり〈大怪獣シリーズ〉でのカラーバリエーションにも、その時々の勇姿の再構築によって、歴史への思いを馳せることも出来るなど、双方共に、多彩な履歴書を携えているのが感じられてきます。

 スーツとしてのグランドキングは、既に長年の役目を終えて久しいのですが…歴史研究の上では、敢えてレプリカを自由自在に活用することで、より多くの人々の目に届き感性を刺激し、対象への研究が深まって、見解が様々に広がっていく可能性が高まるとも言われています。

 〈大怪獣シリーズ〉のグランドキングも、この通算〔3態目〕となる色感覚の違いから醸し出され導き出されてくる、時の刻みの一瞬を、より身近に留めておいておけるのではないかと、思わずにはいられないのです。

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